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宿研通信 10月号

他業種に学ぶ ビジネスコラム

コンサルタント中島セイジの、これからが見えるビジネスコラム。
今回は、和菓子屋「新正堂」をご紹介します。

新正堂のネーミング力に学ぶ

反対の声の中決断した
「切腹最中」

“切腹”…一見すると、あまり縁起の良い言葉ではありません。
ましてや、それを食べ物の商品名にするなんて
考えついたとしても、
そう決断できるものではないはずです。

しかし、それをやってのけたのが、
今年創業100年を数える和菓子屋、新正堂の渡辺仁久(ひろひさ)社長。
そして、新正堂の看板商品が「切腹最中」です。

切腹最中


最中の名前が「切腹最中」に至ったわけは、新正堂本店の立地に関係しています。
新橋にある立地は、田村邸跡と呼ばれており、
田村邸は松の大廊下で刃傷事件起こした浅野内匠頭が、切腹を行った場所だというのです。
浅野内匠頭の刃傷事件こそ、有名な忠臣蔵の発端。
切腹という言葉の響きは良くありませんが、
あの忠臣蔵と関係していると聞けば妙に惹かれてしまう気がします。

折角、この場所に店を構えているのだからと、
渡辺社長はネーミングを「切腹最中」にすることを決意するのですが…
家族や知人から返ってきたのは「そのネーミングはないだろう」という反対の言葉ばかり。
結局は、周囲の影響で、「切腹最中」は構想から発売まで、2年もかかってしまいました。

しかし、それも昔の話。
今や「切腹最中」は、新橋のお店だけではなく、羽田空港や百貨店にも置かれる大ヒット商品で、
毎日かなりの量が売れているというのです。
この成功のカギは、やはり「切腹最中」という名前の威力でしょう。
購入した人は自然と「何故切腹なの?」という疑問を持ち、
「あの忠臣蔵ゆかりの場所にあるんだって!」と話題にもなるからです。

ストーリーをもった商品は口コミになりやすいと言われていますから、
その大胆なネーミングセンス、そして社長の決断が奏功したのです。

では、ネーミングだけでヒットになるのでしょうか?
もちろん、そう簡単なものではありません。
ではなにが? といえば、やっぱり食べ物はその“味”。
渡辺社長は“味”にもこだわっていたのです。
餡に使用する小豆は直火炊きにこだわり、
最中の皮も食べた時、歯にくっつかない高級なものを選択。
名前に惹かれて購入した人も、その美味しさに満足し、誰かに贈りたくなってしまうのです。

「切腹最中」には、人に贈りたくなるストーリーが詰まっています。
ネーミングのインパクトと物語性、そしてこだわりの味。
これらがしっかりと確立されているからこそ、
ヒット商品へとのぼり詰めることができたのです。
もちろん、そこには周囲の反対にも負けず、自分を信じた渡辺社長の決断があってこそ。
多くの人に選ばれている商品には、理由が存在していることが大切なのです。

切腹最中


コンサルタント プロフィール
中島 セイジ(なかじませいじ)
株式会社クオーターバック代表取締役社長。見・投資(みとうし)コンサルタント。マーケティング及び広告戦略を中心にプランニング活動を行い、コンサルタントとして数多くの企業を支援している。『非効率な会社がうまくいく理由』(フォレスト出版)、『儲けないがいい』(アチーブメント出版)が好評発売中。