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宿研通信 1月号

他業種に学ぶ ビジネスコラム

コンサルタント中島セイジの、これからが見えるビジネスコラム。
今回は、日本の鞄メーカー「吉田カバン」をご紹介します。

吉田カバンの信念に学ぶ

日本製にこだわり続ける
吉田カバン

吉田カバン(吉は「土」の下に「口」)は、
1935年吉田吉蔵(よしだきちぞう)氏によって創業されました。
「一針入魂(いっしんにゅうこん)」という信念を掲げ、
確かな職人の技術で一つひとつの鞄を丹精込めてつくっている、日本の鞄メーカーです。

実は、この吉田カバン「できるけど、(あえて)しない」という勇気ある決断をしている企業なのです。

吉田カバン

安価な中国製品が増え、多くの企業が中国に生産工場を移した頃でも、
吉田カバンは決して海外生産に手を出しませんでした。
確かに、生産工場を海外に置けばコスト削減や大量生産は可能ですが、
一度手を出してしまえば今度はベトナムやミャンマーで…などと続いてしまうでしょう。

しかしそれでは、一針に魂を込めて鞄をつくっている日本の職人の技術を失ってしまいます。
ですから、日本に伝わる職人の技術を守るために吉蔵氏は「職人さんを絶やすことは決してしない。
だから“メイドインジャパン”を貫くんだ。海外生産には手を出すな」と言い続けました。

昔から知られる吉田カバンの大きな決断にはもう一例あります。
吉田カバンの大ヒット商品「エレガントバッグ」。
ファスナーの開閉によってマチ部分を調整できる革新的な鞄です。

当然、海外からもライセンスの話がたくさん来たでしょうが、
それでも吉蔵氏は「会社の顔が見えなくなる」と徹底してその話を受けなかったといいます。
ライセンス契約をすれば、鞄はさらに売れ、会社の規模も大きくなったかもしれません。
しかし、吉田カバンならではのクリエイティブや存在意義を守るために、
吉蔵氏は利益を優先せずに「できるけど、しない」決断をしたのです。

できることをすべてやっていけば、一時のお金や規模は手に入るかもしれません。
しかし長期的に見れば、それは必ずしも会社やステークホルダーにとって、
いい影響を及ぼすとは言えません。

吉田カバンの「できるけど、しない」のように、
どれほど商品が売れていても、目先の儲けや自分たちの都合を優先せずに本質を見極めることこそが、
今の日本に必要な価値観ではないでしょうか。

吉田カバン
吉田カバン


コンサルタント プロフィール
中島 セイジ(なかじませいじ)
株式会社クオーターバック代表取締役社長。見・投資(みとうし)コンサルタント。マーケティング及び広告 戦略を中心にプランニング活動を行い、コンサルタントとして数多くの企業を支援している。『非効率な会 社がうまくいく理由』(フォレスト出版)、『儲けないがいい』(アチーブメント出版)が好評発売中。