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宿研通信 11月号

匠が、とっておきの集客術を教えます 集客の匠に訊く

集客の匠に、お客さまを呼ぶポイントを訊くこのコーナー。
4ヶ月連続して“和文化の匠”が宿屋と歳時記の関係についてお話いたします。
今回のテーマは 「歳時記・行事の心」 についてです。

歳時記・行事の心

皆さま、こんにちは。“和文化の匠”三浦康子です。

前回より、歳時記・行事の集客力をテーマにお話ししておりますが、
第2回目は、歳時記・行事の心についてです。

行事の心を
おもてなしに活かす

みなさんは、集客に行事を取り入れるというと、
どんなことをイメージなさいますか?
来月12月なら、クリスマスイベントや冬至の柚子湯あたりでしょうか。
もちろん、それも結構ですが、
最も大事なことは、表面的な形ではなく、
行事の心をおもてなしに活かすことです。

日本の行事を紐解くと、宮中行事や農耕神事だったものがほとんどで、
「公」の幸せを願って邪気払いをしたり、豊作祈願をしたりする内容でした。
それが時代とともに家庭に浸透していくと、祈願の対象がより身近になり、
「私」(家族)の幸せを願うものになっていき、
行事にまつわる全ての物事に、見えない思いを託すようになりました。

つまり、日本の行事というのは、幸せを願う気持ちを形にしたものなので、
私はこれを「幸せ行事」と呼び、大切な人に対する愛情表現になると説いています。
単なるイベントは、楽しいだけで終わりますが、
文化と愛情に包まれた「幸せ行事」は、
真心のこもったおもてなしとして、お客様の心に刻まれるのです。

先ほどの例でいえば、
クリスマスは、日本の場合はイベントの意味合いが強いので、
飾りもので季節感や華やかさを演出しながら、
洒落たカードにメッセージを添えて枕元に置いたり、
デザートにケーキを添えたりすることで、
楽しいひとときを過ごしていただけるよう工夫すると良いでしょう。
もちろん、宿のスタイルや客層によって異なりますが、
お子様向けに、サプライズ企画を盛り込む方法もあります。

冬至は、1年で最も昼が短くなり、翌日から陽が伸びていくので、
陰が極り陽にかえる日、凶から吉に向かう「一陽来復」とされ、
誰もが上昇運に転じる希望に満ちた日とされています。
柚子湯は、香りと効能が無病息災、語呂が融通・湯治に通じるもの。
南瓜(なんきん/かぼちゃ)は、「ん」のつくものを供える運盛りのひとつで、
北(陰)から南(陽)へ向かう意があり、冬の栄養補給にもなる暮らしの知恵です。

冬至粥は、小豆の赤が魔除けになるお粥。
このほかにも、「胃のほうき」「腸の砂おろし」と呼ばれるこんにゃくを食べるなど、
冬至ひとつにも、幸福を願う様々な風習があります。

当然のことながら、宿によって出来ることと出来無いことがありますが、
こうした文化を、お客様ひとりひとりの幸せにつながるおもてなしとして、
何かひとつでも取り入れてみてはいかがでしょう。

世間的には、華やかで見栄えの良いクリスマスに注目が集まりますが
お客様の心に響くとなると、文化が語れる冬至に軍配をあげる方が少なくありません。
ちなみに、クリスマスのルーツには、冬至が深く関係しているといわれています。

パーソナルなおもてなし行事が
感激につながる

行事というと、賑やかなイベントや、優雅で高尚な世界を再現する場合が多いのですが、
「楽しい」「すごい」というものは、浅い感動になりがちです。
その点、一見地味であっても、お客様ひとりひとりに思いが届くものを取り入れると、
「嬉しい」と感激し、宿のファンになってくれます。
これは、パーソナルなおもてなしが重要視されるのと一緒ですから、
宿のスタイルによって、前者と後者をバランスよく散りばめてみてください。

最近は、文化背景を知らない世代も多いので、
さりげなく話を添えたり、説明を書いておいたりすると、
コミュニケーションのきっかけになり、宿の付加価値もあがります。

また、行事には食べものが重要な役目を果たしますので、
次回は、歳時記・行事の食べものについてお伝えします。

 

 
和文化の匠 プロフィール
三浦 康子 (みうら やすこ)
和文化研究家、ライフコーディネーター。暮らしを彩る日本文化の情報発信に幅広くたずさわり、テレ
ビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、セミナーなどの登場回数は2500を超える。All A bout「暮らしの歳時
記」、キッズgoo「こども歳時記」、NHKラジオ第1「ラジオあさいちばん」、「私の根っこプロジェクト」
などレギュラー多数。「行事育」を提唱し、来春『行事育えほん・親子で楽しむ日本の幸せ行事』(仮称)
を出版予定。著書『粋なおとなの花鳥風月』(中経出版)ほか多数。