【印刷用レイアウト】

宿研通信 12月号

匠が、とっておきの集客術を教えます 集客の匠に訊く

集客の匠に、お客さまを呼ぶポイントを訊くこのコーナー。
4ヶ月連続して“和文化の匠”が宿屋と歳時記の関係についてお話いたします。
今回のテーマは 「季節の食べものの力」 についてです。

季節の食べものの力

皆さま、こんにちは。“和文化の匠”三浦康子です。

先々月より、歳時記・行事の集客力をテーマにお話ししておりますが、
第3回目は、季節の食べものの力についてです。

旬の食べものが
宿の評価を高める

日本では、旬の食べものをとても大事にしますので、
宿の料理にも、旬が反映されていることが多いと思います。

旬のものには、その時期の身体に必要な栄養分が含まれているため
旬のものを食べることで、体調を整える効果があります。
そのおいしさに顔がほころび、栄養価の高さに身体も悦ぶ。
自然に人を元気づけてくれるのですから、
旬を大事にすることは理に適っています。

また、旬のものは季節の移りかわりを私たちに教えてくれます。
さらに、旬をひとくくりにせず、
もうこんな季節がきたのかと「走り」を楽しみ、
最盛期には「盛り」を堪能し、
終盤になると「名残」と称して移り行く季節を惜しむなど、
繊細な日本人の感性は、季節の移ろいに寄り添う心に満ちています。

四季折々の食べものを口にできる悦びはとても大きく、
宿の評価を高めてくれるものです。
最近は旬がわからない方が増えているので、
メニュー表示や配膳時に、旬の話をさりげなく盛り込むと良いでしょう。

郷土の行事食が
至福の経験となる

もうひとつ、日本には季節を堪能できる食べものがあります。

それは、行事食。
お節料理、雑煮、柏餅といった行事にまつわる食べものです。

第1回目で、ケの日常が続くと気が枯れてしまうので、
所々にハレの祭りや行事をもうけて気晴らしをし、
元の気に戻して元気になる、という文化の話をしました。

こうした祭りや行事というのは、神様への祀りごとでもあったので、
行事には必ずお供えものがあり、
これがいわゆる行事食として食文化を支えてきました。

現在は「節句」と書きますが、本来は「節供」と書き、
供物を食べて元気になることが行事の本意だったことを示しています。

節供料理というのは、栄養をとるだけではなく、
旬のものから“気”をいただく役目があるわけです。
なかでもお正月が最も重要だったため、
節供料理といえば正月料理をさすようになり、
お節と呼んで親しまれるようになりました。

こうして思いが凝縮された行事食には、
その土地の食文化が色濃く反映されていったので、
旅先で出会う行事食に驚かされ、
それを楽しみにされている方も多いですね。

たとえば、正月に宿で頂いたお雑煮に感動する例をよく耳にします。
そもそも雑煮というのは、
年神様から授かった御年魂(お年玉のルーツ、餅玉)をいただくための料理ですから、
旅先で口にすることで至福の経験となります。

人日の節供の七草粥、しかり。
桃の節供の桃花酒、しかり。
歳時記・行事の食べものは、風情もあるので感動しやすく
語り草となってファンを増やしていきますから、
こんなチャンスを逃す手はありません。

また、こうした歳時記・行事の食べものには、
ほかの物事にはないリピート力がありますので、
次回はそのお話をいたします。

 

 
和文化の匠 プロフィール
三浦 康子 (みうら やすこ)
和文化研究家、ライフコーディネーター。暮らしを彩る日本文化の情報発信に幅広くたずさわり、テレ
ビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、セミナーなどの登場回数は2500を超える。All A bout「暮らしの歳時
記」、キッズgoo「こども歳時記」、NHKラジオ第1「ラジオあさいちばん」、「私の根っこプロジェクト」
などレギュラー多数。「行事育」を提唱し、来春『行事育えほん・親子で楽しむ日本の幸せ行事』(仮称)
を出版予定。著書『粋なおとなの花鳥風月』(中経出版)ほか多数。