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宿研通信 12月号

匠が、とっておきの集客術を教えます 集客の匠に訊く

集客の匠に、お客さまを呼ぶポイントを訊くこのコーナー。
4ヵ月連続して“インバウンドの匠”が
「宿屋に求められるインバウンド施策」についてお話しいたします。
今回のテーマは「文化を認め合う集客」についてです。

文化を認め合う集客

みなさま、こんにちは。“インバウンドの匠”村山慶輔です。
4回にわたり、「宿屋に求められるインバウンド施策」についてお話ししています。
どうぞよろしくお願いいたします。

第3回は、「文化を認め合う集客」についてです。

文化を
「教える」おもてなし

前回は集客における口コミの活用方法と、
日本と海外の口コミの評価のちがいについて
事例を交えながらご紹介しました。

インバウンド施策を考えている宿屋にとって
口コミの評価以上に心配している方が多いのが、
「インバウンドのお客さまとのトラブル」について。

ひとつ、トラブルの事例をご紹介します。
ある宿屋では、朝食はお客さまが自由に楽しめるよう
ビュッフェ形式にしていました。
しかし、その宿屋に宿泊していた中国からの団体客は
ビュッフェの皿ごと自分のテーブルに
持ってきてしまいました。
またあるお客さまは、たくさんとり分けたものの、
食べ残しも多く、対応に困ってしまったというものです。

中国では「テーブルに大皿を置いてとり分ける」という文化と、
「お皿に食べ残すことで満足を表現する」というマナーがあります。
そのため、一見迷惑に見えるお客さまの行為が、
お客さまの国にとっての常識である可能性があるのです。

そこで、このようなトラブルを避けるためにも大切なのが、
「事前にお客さまの国の文化を調べておくこと」です。
その国の文化や食事マナー、基本的な価値観などをあらかじめ
調べておくことで、起こりうるトラブルを想定し、
対策をとることができるでしょう。

今回のケースでは、
おもてなしをする側である私たちの価値観を優先し、
マナー違反を「注意」してしまうと、相手は困惑してしまいます。
相手の文化をあらかじめ理解し、受け入れた上で
日本の文化を「教える」ことが大切なのです。
ビュッフェ会場に日本でのマナーを簡単に書いた、
「注意書き」を表示するだけでもトラブル防止になるでしょう。

コミュニケーションで
トラブル防止

訪日観光客と宿屋との間で起こるトラブルは、
ビュッフェでのマナー以外にも、
間違った温泉の入り方や敷布団の使い方などたくさんあります。
しかし、それらは外国人観光客が日本の文化に慣れていないが故に
起きてしまっていることがほとんどです。

これらのトラブルを未然に防ぐためにも、
重要になってくるのは“コミュニケーション”です。
ツアーを組んでいる場合は、あらかじめお客さまに
日本の宿屋の基本的なマナーを伝えるように旅行会社に相談すると
事前に説明してもらえるため、トラブル防止に繋がるでしょう。

一方、ツアーを利用しないお客さまの場合は、
直接お客さまとコミュニケーションをすることが必要です。
この時「言語が分からないのでコミュニケーションできるか不安…」
と思う方も多いかもしれません。
しかし、コミュニケーションをする方法は言語だけではありません。
簡単なイラストで日本のマナーを紹介した紙を渡したり、
部屋を案内する際に自ら身振り手振りで実演すれば、
相手からの理解を得られるでしょう。

ここで、少し面白い事例をご紹介します。
中国を訪れたある日本人旅行者が、
宿屋でトイレを利用した時のことです。
日本で利用しているように使用済みのトイレットペーパーを
便器に流したところ、パイプがつまってしまったそうです。
これは、日本に比べて中国の水圧が低いために起こったことであり、
使用済みのトイレットペーパーはゴミ箱に捨てるのがマナーでした。
この場合、日本人旅行者の行為は
宿屋にとって「マナーがない」といえるでしょう。

このように、旅行中につい自国の常識で
行動してしまうことはよくあることです。
その際に、相手側の立場に立って対応することが大切です。
たとえ外国人観光客がマナー違反な行動をしても、
「お互いさま」と思い、丁寧にマナーを教えてあげることが
おもてなしにも繋がるでしょう。

 
インバウンドの匠 プロフィール
村山 慶輔 (むらやま けいすけ)
株式会社やまとごころ代表取締役。インバウンド戦略アドバイザー。米国ウィスコンシン大学マディソン校卒。2007年にインバウンド観光に特化したBtoBサイト「やまとごころ.JP」を立ちあげ、さまざまな業界に情報発信、教育・研修、コンサルティングサービスなどを提供。インバウンドビジネスの専門家として、ワールドビジネスサテライト、NHKワールドをはじめ、国内外各種メディアへ出演多数。著書に「訪日外国人観光ビジネス 沸騰するインバウンド市場攻略ガイド(翔泳社)」がある。