【印刷用レイアウト】

宿研通信 3月号

互いの協力で理想の未来を形に。ここはアイディアの宝庫 宿研トピックス

宿研からのお知らせや、パートナー施設さまの取り組みなどをご紹介するこのコーナー。
今回は、お客さまに選ばれる最適な価格設定の方法をお教えします。

取引コストを考慮した価格設定

集客に大きく関わる“施設の宿泊料金”。
「低く設定してしまったら利益が出ない…」
「高く設定してしまったらお客さまが来ない…」
こんなジレンマに悩まされている方は多いのではないでしょうか?

当然のことながら、宿泊施設はお客さまに来ていただかなければ経営が成り立ちません。
そこで今回の宿研トピックスでは、
「お客さまに選ばれる価格設定」について考えていきたいと思います。

全く同じ価値のものでも、
条件によって選ばれないことがある

例えば、メーカー・ブランド・内容量・賞味期限全てが
同じペットボトルのお茶が、同じ場所で147円と98円で販売されていたとしましょう。
みなさんだったら、どちらのお茶を買いますか?
ほぼ全員が98円のお茶を選ぶのではないでしょうか。
(中には安い方は品質が悪いのではないか、と疑いをかけて
147円のお茶を買う方もいるかもしれませんが…)

しかし実際には、コンビニでは147円、スーパーでは98円で売られているにも関わらず、
147円を出してコンビニで買う人が多くいます。
これには理由があります。それが、「取引コスト」という考え方です。

取引コストとは、時間と労力、余分なお金の支出、他の資産の使用、心理的負担などの、
本体価格とは別に発生するコストのことを指します。


先の例を、立地条件も踏まえて考えてみましょう。
みなさんの家から、コンビニは徒歩2分、スーパーは徒歩15分かかるとします。

さて、みなさんはどちらでお茶を買いますか?
近くのコンビニで気軽に147円で買うか、15分歩いてでも49円分安く買うか
迷う方がいらっしゃるのではないでしょうか。

それでは大雨だった場合はどうでしょう。
「15分も歩いたら体がビショビショになってしまう」という心理的負担や、
服を乾かす労力が増えるため、近くのコンビニで買う人が増えるのではありませんか?
また、朝6時にどうしてもお茶を買いたくなった場合はどうでしょうか?
24時間営業のコンビニなら、行けばすぐに買えますが、
スーパーの開店が10時だった場合は4時間も待たなければなりません。
そうすると、4時間はお茶が飲めず、喉がカラカラになるかもしれないという
心理的負担が生じ、ほとんどの人がコンビニでの購入を選択します。

同じ場所なら、ほぼ全員が98円のお茶を買う
 

高いけど近くのコンビニでお茶を買う人が増える
 

サービスの質だけでなく、
付随する要素も集客に影響する

では次に、この「取引コスト」を宿泊施設に置き換えてみましょう。
お客さまにとって同じ価値を持っているA旅館とB旅館があるとします。

【ケース1:A旅館とB旅館が同じ条件の場合】
サービスの質は同じ。どちらも、宿泊料金は10,000円、
家からの交通費は2,000円で1時間程度かかるとします。
この場合は、A旅館を選ぶ人もいれば、B旅館を選ぶ人もいるでしょう。

【ケース2:宿泊料金に差がある場合】
A旅館が10,000円、B旅館が8,000円だとしたら、お客さまはどちらを選ぶでしょうか?
同じ価値のサービスが受けられるのであれば、本体価格の安いB旅館に行く人が多いでしょう。

【ケース3:宿泊料金と立地条件が異なる場合】
ケース2と同じ宿泊料金のまま、
A旅館は電車で1時間、交通費は2,000円かかり、
B旅館は電車で3時間+バスで30分、交通費は8,000円かかるとします。
この場合お客さまはどちらに行きたいと思うでしょうか?

このケースだと、旅館への所要時間に2時間30分、
交通費に6,000円の「取引コストの差」が生じています。
長い時間電車に乗ったり、バスに乗り換えたりすることによって
労力差も生じていると考えられるでしょう。
宿泊料金2,000円の差額を加味しても、A旅館に行く人が多いはずです。

これが、首都圏近郊のアクセスのよい宿泊施設が、
全国的に見ると高い料金設定でも比較的お客さまが入っている理由です。

お客さまは買うものの「本体価格+取引コスト」を鑑みて宿泊施設を探しています
従って、全く同じ価値と認識されているA旅館とB旅館の事例では、
取引コストや本体価格を下げることでお客さまの予約数が大きく変わってくるのです。

 
 
取引コストが同じなら安いB旅館に泊まる
 

取引コストを加味するとA旅館に泊まる
 

最近では、取引コストを下げるために、施設の最寄り駅まで送迎バスを出したり、
首都圏まで送迎バスを出す施設もあります。

 
ウェブ上でもアクセスのしやすさが
取引コスト削減につながる

お客さまが旅行をする際に生じる取引コストは、
施設に行くまでにかかる時間と交通費だけではありません。

宿泊施設を探す労力も取引コストと考えられます。
お客さまに宿泊予約をしてもらうには、探しつかれてしまう前に
自分の施設紹介ページに辿りついてもらう必要があります。
宿泊予約サイトであれば、エリア検索や特集で上位に掲載される必要があります。

施設紹介ページの中から希望のプランを探す労力も同様です。
施設を決めて、いざプランを選ぼうというときに
プラン内容やタイトルがわかりにくければ、施設の印象は下がってしまいます。
最悪の場合は、お客さまが面倒になって予約を取りやめてしまうことも。

また、未知のものに対する不安も取引コストのひとつです。
宿泊経験のある施設であれば、このコストは生じませんが、
初めて宿泊する施設に対しては期待に添う施設がどうかの不安が生まれます。
だからお客さまに滞在時のイメージを持っていただける画像や、表現を使う必要があるのです。

 
 
お客様が旅行をする際の取引コスト
 
 

競合施設(お客さまにとって同様の価値と見える可能性が高い施設)は、
どこにあるのかを、いつもより少しエリアを広げて定期的に調査してみましょう。
そして、取引コストを加味して考えた場合、自館に勝ち目があるのかを常に意識してください。

競合施設が本体価格を値下げすることは自館の集客に大きく影響を与えます。
それは取引コストを下げてきた場合も同様です。

より多くのお客さまに選ばれるためには、
時には競合施設に流れるかもしれないお客さまを取り込むために、
他よりも先に仕掛けることも必要になってきます。
本体価格と取引コストを意識して価格設定することで、
今まで来ていただけなかったお客さまにも来ていただきましょう。

(文:メディアサービス室 坂本 真士)