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【2024年】宿泊業界の動向~現状とこれからを徹底解説~宿泊業はこれから何を求められるのか
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【2024年】宿泊業界の動向~現状とこれからを徹底解説~宿泊業はこれから何を求められるのか

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2023. 08. 22

最終更新 2024. 07. 02

【2024年】宿泊業界の動向~現状とこれからを徹底解説~宿泊業はこれから何を求められるのかのキービジュアル

目次

    2023年も折り返しを過ぎ、コロナ禍という消費者の足かせが外れ消費行動が活発化してきました。同時に、この3年間で社会の価値観、個人の価値観が大きく変わったことは、宿泊業に携わる多くの人が実感していることと思います。

    今回は現在の宿泊業の実態と、これからの宿泊業について考察しご紹介します。現状の実績確認として、また今後の戦略の手がかりとしてご一読ください。

    1.宿泊業を取り巻く現在の景気動向

    国内の景気動向

    はじめに、国内の全産業の景気動向について触れてみたいと思います。
    2023年7月までの全産業における景気動向指数(DI)は各月で微増減があるものの推移の傾向として、景気は緩やかな回復に向かっています。理由は人出の増加や季節もの(夏)消費が好調なためです。

     

    今後の景気については、インバウンドの需要増加を要因とした対面サービスを中心に、引き続き緩やかな上向き傾向で推移すると予想されています。

     

    ただし、懸念点として物価の高騰による消費者の「値上げ疲れ(買い控え)」が起き始めていることです。この先の物価動向(食品の値上げ)については以降の章で詳しくご紹介します。

     

     

    宿泊業の景気動向

    宿泊業の景気は2023年7月時点で、3カ月ぶりに改善に転じています。
    要因は、大型イベントの開催復活により人の移動が活発になっているためです。国内旅行の需要は2019年と比べ9割ほどに回復しており、今後も右肩上がりで続いていくと予想されています。一方、インバウンドは2019年の7割近くまで回復してきており、日本政府観光局では2019年と同じ水準に戻るのは2024年10月頃と予測しています。

     

    旅行需要が高まる中、客室稼働率はどうでしょうか。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2023年1月~6月までの宿泊施設タイプ別稼働率全国平均は以下の通りです。

    2.宿泊業の大きな2つの課題とその現状

    現在の宿泊業の大きな課題は2つあります。それは、①利益率②人材不足です。
    この2つの課題の実態はどのようなものなのかご紹介します。

    <結論>
    ①宿泊業の利益率の平均は4%前後。望ましいのは10%。原価率の平均は20~25%
    ②コロナ禍で流出した人材は6割が戻っていない。人材確保のカギは賃上げと職場環境の改善。

     

     

    ①宿泊業の利益率と原価率について

    宿泊業の利益率の合格水準は10%※程度と言われ、20%が目標とされています。他の業種と比べ低い水準となっている要因は人件費や食費、設備費などの固定費が大きく、利益率を上げることが難しいためです。
    では、実情の利益率はどれくらいなのか。参考として調査規模が大きく正式なデータとして財務総合政策研究所が調査した「法人企業統計調査2018」があり、そこで示されている利益率は、全産業の利益率が平均4.4%であるのに対して、宿泊業は3.7%との調査報告がされています。実際のご自身の利益率と照らし合わせ、利益率が10%に到達できているかご確認ください。

     

    ※参考元
    (一社)日本ホテル協会:2021年度のホテル業の平均利益率を9.3%と公表。
    (株)日本政策金融公庫:2022年度の旅館業の平均利益率を10.0%と公表。
    これらの一般的な平均値から利益率は10%程度が合格水準として捉えた。
    ただし、土地代や減価償却など施設ごとの環境があるので一概にはいえない。

     

    利益率に関係する『原価率』についてもご紹介しておくと、日本旅館協会の「令和4年度営業状況等統計調査」による各項目の平均原価率は以下の通りです。こちらもご自身の施設と比較してみてください。宿泊業に新規参入を計画されている事業者様は以下の原価率を参考にするとよいでしょう。


    (参考:日本旅館協会, 令和4年度 営業状況等統計調査, 【資料編】令和4年度 営業状況等統計調査)

     

    ②最も多くの宿泊施設が課題を抱えている「人手不足」について

    宿泊業に限らず、国内のどの産業においても人手不足が起きています。実際に帝国データバンクの調査※1では、人手不足を感じている国内企業の割合は5割を超えており、なかでも宿泊業では8割の企業が人手不足の状態となっています。宿泊業において人手不足が深刻化している要因は、コロナ禍で流出した人材が他の産業に流出したまま戻っておらず、加えて旅行需要が急激に回復したことにより供給が追いついていないためです。

     

    他の産業ではコロナ禍で流出した人材は徐々に戻ってきていますが、宿泊業では6割の企業が流出した人材の数が戻っていないと答えています。尚、人材が戻っていないと答えた割合が5割を超える産業は宿泊業が唯一でした。

     

    では、他の産業で人材確保に成功した企業はどのような取り組みをしたのでしょうか。
    帝国データバンクの調査結果※2によると、「人手が不足していない」と答えた企業が、その要因について回答した結果、もっとも多かった要因は「賃上げ」であったと回答しています。

     

    「人手が不足していない」と答えた企業の実際の声です。

    ✓ 既存社員の賃金アップほか、入社時の初任給を年収で50万円上げたところ、
      応募件数が変わってきた。
    ✓ 時間外勤務の抑制や有給休暇の取得向上に力を入れ、従業員の定着化に
      取り組んでいる。
    ✓ 社員への丁寧なフォローによる退職者の抑制を図った。
    ✓ 働く社員の処遇改善や働く環境をHPなどでアピールすることが重要。

     

    求職者側からすれば、近年の物価高が顕著に表れている社会情勢下で、少しでも給与の良いところで働きたいと考えることは合理的な思考といえます。一方、企業側からすれば人材確保のために賃上げや、働きやすい職場環境づくりの改善には予算が必要です。そうなると先述の利益率の向上が直接的に関わってくる問題です。

     

    宿泊施設では、実際に利益を上げるためにもっと予約を受けたいが、人手不足で受け入れたくても受け入れられないという問題も多く発生しています。

     

    このように、現在とこれからの宿泊業の課題「利益率」と「人材確保」はそれぞれ別軸の問題ではなく、繋がりがあり互いに干渉してくる問題といえます。利益率向上に関して、観光庁では宿泊施設の利益率向上のための経営ガイドラインを設け、そのガイドラインに沿った経営を実施する施設を国や自治体がバックアップする制度を整えています。

    経営状態を正しく整えたい、これから宿泊業に新規参入を考えている事業者様は、観光庁が実施している『宿泊業の高付加価値化のためのガイドライン』に登録することを推奨します。この登録制度の概要が知りたい方は、どこよりも分かりやすく解説した過去の記事をご覧ください。

    ※1 帝国データバンク「企業の正社員・アルバイト」従業員数動向調査2023年7月14日
    ※2 帝国データバンク「企業における人材確保・人手不足の要因に関するアンケート」2023年5月17日

    3.2023年以降の旅行需要と宿泊業に関わる物価動向

    これからの宿泊業に関係する事として、①今後の旅行需要の動き(ニーズ)と、利益率に関わる②物価動向についてご紹介します。

    <結論>
    ①これからの旅行ニーズのキーワードは「地域」と「精神的な健康」
    ②次の大きな物価上昇のタイミングは2023年10月!値上げ品目数は過去トップクラスに並ぶ予定

    ①これからの旅行需要の動き(ニーズ)

    先述の通り、国内旅行の需要は2019年の9割にまで回復しています。
    コロナ禍が明けてからの旅行ニーズの変化は皆さんも実感されていると思いますが、これからはどのような旅行ニーズがあるのでしょうか。

    JTB総合研究所によると、現在旅行意欲が最も高いのはボリュームが小さいながらも20代。なかでも女性です。そして、60代以上のシニア層の旅行意欲が高まっています。
    これからはシニア層の2名利用だけでなく、3名以上の利用も多く見かけるでしょう。


    ※出典元:JTB総合研究所「2023年(1月~12月)の旅行動向見通し」

    そして、これからの旅行ニーズとなるキーワードは「地域」「精神的な健康」です。

    【 地 域 】

    じゃらん宿泊旅行調査2023によると、どの宿泊施設タイプにおいても素泊まりの需要が増しています。また、肌感ではありますが、地域に関する検索キーワードにおいて「地域名+夕食」「地域名+朝食」の検索回数が多くなっている地域をよく見かけます。コロナ禍で「おこもり」という地域から遮断された施設内で過ごす過ごし方から、積極的に地域に出向く傾向がみて取れます。

    ビジネス利用についても、国が新しいビジネス出張のカタチとして、「ブリージャー」を浸透させようとしています。「ブリージャー」とは「ビジネス(Business)」と「レジャー(Leisure)」を合わせた造語で、ビジネス出張の前後の日程を余暇に充て、現地の観光やレジャーを楽しむ旅行形態です。
    この価値観が社会に浸透すれば、これまでの「楽しめない、面倒な出張」から「毎回楽しみに満ちた出張」という、出張の概念をゲームチェンジできる機会が訪れるでしょう。

    ビジネスホテルの取り組みとして、地域資源との結びつきを強め、出張者にブリージャーという新しい旅行形態の啓蒙活動に力を入れてみてはいかがでしょうか。「ビジネス出張」から「地域を楽しむビジネス旅行」に視座を変えると、思考の幅が広がり提供できるサービスやアイディアが増えることでしょう。

    【 精 神 的 な 健 康 】

    以前の記事でもご紹介しました「ウェルネスツーリズム」のように、心身の健康に根差したサービスカテゴリーが増えています。一般的に多くの人にとって「心身のリフレッシュ=旅行」が結びついているので、宿泊業が活躍できるとても良い社会風潮といえます。

    ウェルネスツーリズムの需要については過去のこちらの記事をご覧ください。

    現代は何もかもが便利で完成度の高い製品・サービスが溢れる世の中になったがゆえに、些細な出来事でも大きなストレスに感じてしまう時代です。また、若い層にとっては本来コミュニティが広がるはずのSNSによって「孤立」を感じる人が多くなっているという世情もあります。このような社会の中で「旅行をする意味」「あなたの施設で約束できること」を自社の強みと絡めて、どのように提示できるか考えてみる機会を設けてみてはいかがでしょうか。特にリブランドを考えている事業者様は、新たにこういった視点も必要と考えます。

    4.これからの社会における宿泊業の役割

    これからの社会における宿泊業の役割は大きく2つあると考えます。

    ①ストレス社会における「精神的な健康」をサポートする場所
    ②年齢や心身的特徴関係なく、誰もが旅行を楽しめるユニバーサルツーリズムの実現

     

    ①「精神的な健康」をサポートする場所

    先述の通り、便利な世の中、考えることが多くなった社会がゆえに、些細なことでもストレスを感じ、医師にかかるレベルではないけれど、前向きで元気な状態ではない人が増えています。
    とある企業の商品コピーを私たちの業界に言い換えると、『人には旅行が必要な時が2つあります。ハッピーなときと、そうでないとき』
    旅行はハッピーな時だけではなく「そうでないとき」にも意味のある消費行動です。自己管理力(セルフケア)が大事になってくる社会だからこそ、旅行、宿泊滞在が利用される意味、担う役割はさらに大きくなってくるでしょう。

    特に疲れた精神を休めるために、人込みから離れた場所などの穏やかに過ごせるエリアはこのことをしっかりPRしておく必要があります。「アクセスが不便」「周りに何もない」というデメリットは文脈を変えれば、これからの社会にとって大きなメリットにゲームチェンジできます。

     

    ②ユニバーサルツーリズムの実現

    過去にこちらの記事「2025年問題 宿泊業が社会から求められること」でも取り上げましたが、超高齢化社会を迎えるなかで、年齢による支障や、心身の障害等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行、すべての人が楽しめるよう創られた旅行の実現が社会に求められています。いわゆる、ユニバーサルツーリズムです。このユニバーサルツーリズム実現のために、宿泊施設はその環境を提供する立場として社会的責任があります。

    バリアフリー化と聞くと主にハード面の整備に注力するイメージが強いですが、今後はハード面では対応できないソフト面の整備にも注力する必要があります。ソフト面の一例としては、筆談・手話によるコミュニケーション、点字案内物の用意 、 補助犬ユーザー用にマットやボウルの貸出し、刻み食やとろみ食など調理のアレンジ対応、「クロックポジション」を用いた料理配膳、テレビの字幕表示が可能なリモコンの貸出しなどがあります。

    そして何より重要なのが、これらを整備していることを情報発信することです。なぜなら、ハンディキャップを持つ方や同伴する方は、その宿泊施設を利用できるかどうかを事前に判断するための情報が必要となるからです。
    このため観光庁では、バリアフリー対応や情報発信に積極的に取り組む姿勢のある宿泊施設を含む、観光施設を対象とした「観光施設における心のバリアフリー認定制度」を創設しています。この制度の詳細は観光庁公式ページ「観光施設における心のバリアフリー認定制度」をご確認ください。

    【 余 談 】
    誰もが気兼ねなく参加できる旅行を推奨する一方、度を越した要求やクレーマーと呼ばれる理不尽な言いがかりをする人も存在し、従業員の方の大きなストレスとなっています。コロナ禍でクローズアップされた問題として、宿泊施設は宿泊拒否できない問題がありましたが、これに対し、政府は現行の旅館業法を改正し、迷惑客の宿泊拒否を可能にしました。
    具体的には、以下のような内容が迷惑客に該当する可能性があります。

    • 騒音や暴力などの行為により、他の宿泊客や従業員の迷惑となる行為
    • 無断で喫煙やペットの持ち込みなどの、宿泊施設のルールに違反する行為
    • 無断で延泊や追加料金の支払いを拒むなどの、支払いに応じない行為

    宿泊業者はこれらの行為が繰り返される場合には、迷惑客であると判断し、宿泊を拒むことができることになります。ただ、宿泊拒否を行った場合、宿泊業者は宿泊しようとする者に対して、宿泊拒否の理由を説明する義務があります。

    さいごに

    ようやく消費が戻り、旅行需要が高まったことで多くの施設様が多忙だと思います。同時に利益幅や人に絡む悩みが大きくなりつつ、目の前の顧客管理やサービスにも力を入れないといけなくなると、どうしても視線が足元に下がり視野が狭くなります。

     

    現代は社会変動が激しく、またその影響を受けやすい宿泊業界だからこそ、視座を上げ自社や競合以外の『社会』にも注視する必要があります。このような外的要因は自社でコントロールできるものではありませんが、大事なのは自社のビジネスに影響を与える社会的要因をモニタリングして、変化の内容に注意を払うことです。

    『社会』の流れを知り、その変化を味方にできる文脈を見つけることができれば『社会』にとって自社が価値ある存在となるでしょう。そして、そこで生み出された価値は競合との優位性にも寄与します。

     

    今回は、多忙で大きな視点が抜けてくる今だからこそ、これからの宿泊業を取り巻く社会的要因として旅行需要や物価動向、吉凶の判断基準となる客室稼働率、利益率、原価率をご紹介しました。
    自社の強みを比較的近い“これからの社会”のなかで価値としてどうポジショニングするのか、どう文脈づくりしていくか考える機会になれば幸いです。

     

    これからの集客戦略について私たちがご提案します。

     

     

     

    2023年も折り返しを過ぎ、コロナ禍という消費者の足かせが外れ消費行動が活発化してきました。同時に、この3年間で社会の価値観、個人の価値観が大きく変わったことは、宿泊業に携わる多くの人が実感していることと思います。
    今回は現在の宿泊業の実態と、これからの宿泊業について考察しご紹介します。現状の実績確認として、また今後の戦略の手がかりとしてご一読ください。

     

    ------------目次-------------

    1.宿泊業を取り巻く現在の景気動向
    2.宿泊業の大きな2つの課題とその現状
    3.宿泊業のこれから
    4.これからの社会における宿泊業の2つの役割
    5.さいごに

     

     

    1.宿泊業を取り巻く現在の景気動向

     

     

    ▼ 国内の景気動向

     

    はじめに、国内の全産業の景気動向について触れてみたいと思います。
    2023年7月までの全産業における景気動向指数(DI)は各月で微増減があるものの推移の傾向として、景気は緩やかな回復に向かっています。理由は人出の増加や季節もの(夏)消費が好調なためです。
    今後の景気については、インバウンドの需要増加を要因とした対面サービスを中心に、引き続き緩やかな上向き傾向で推移すると予想されています。ただし、懸念点として物価の高騰による消費者の「値上げ疲れ(買い控え)」が起き始めていることです。この先の物価動向(食品の値上げ)については以降の章で詳しくご紹介します。

     

     

    宿泊業の景気動向

     

    宿泊業の景気は2023年7月時点で、3カ月ぶりに改善に転じています。
    要因は、大型イベントの開催復活により人の移動が活発になっているためです。国内旅行の需要は2019年と比べ9割ほどに回復しており、今後も右肩上がりで続いていくと予想されています。一方、インバウンドは2019年の7割近くまで回復してきており、日本政府観光局では2019年と同じ水準に戻るのは2024年10月頃と予測しています。

    旅行需要が高まる中、客室稼働率はどうでしょうか。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2023年1月~6月までの宿泊施設タイプ別稼働率全国平均は以下の通りです。




     

    2.宿泊業の大きな2つの課題とその現状


    現在の宿泊業の大きな課題は2つあります。それは、①利益率②人材不足です。

    この2つの課題の実態はどのようなものなのかご紹介します。

    <結論>
    ①宿泊業の利益率の平均は4%前後。望ましいのは10%。原価率の平均は20~25%
    ②コロナ禍で流出した人材は6割が戻っていない。人材確保のカギは賃上げと職場環境の改善。

     

    ①宿泊業の利益率と原価率について

     

    宿泊業の利益率の合格水準は10%※程度と言われ、20%が目標とされています。他の業種と比べ低い水準となっている要因は人件費や食費、設備費などの固定費が大きく、利益率を上げることが難しいためです。
    では、実情の利益率はどれくらいなのか。参考として調査規模が大きく正式なデータとして財務総合政策研究所が調査した「法人企業統計調査2018」があり、そこで示されている利益率は、全産業の利益率が平均4.4%であるのに対して、宿泊業は3.7との調査報告がされています。実際のご自身の利益率と照らし合わせ、利益率が10%に到達できているかご確認ください。

    ※参考元
    (一社)日本ホテル協会:2021年度のホテル業の平均利益率を9.3%と公表。
    (株)日本政策金融公庫:2022年度の旅館業の平均利益率を10.0%と公表。
    これらの一般的な平均値から利益率は10%程度が合格水準として捉えた。
    ただし、土地代や減価償却など施設ごとの環境があるので一概にはいえない。




    利益率に関係する『原価率』についてもご紹介しておくと、日本旅館協会の「令和4年度営業状況等統計調査」による各項目の平均原価率は以下の通りです。こちらもご自身の施設と比較してみてください。宿泊業に新規参入を計画されている事業者様は以下の原価率を参考にするとよいでしょう。


    (参考:日本旅館協会, 令和4年度 営業状況等統計調査, 【資料編】令和4年度 営業状況等統計調査)

     

     

    ②最も多くの宿泊施設が課題を抱えている「人手不足」について


    宿泊業に限らず、国内のどの産業においても人手不足が起きています。実際に帝国データバンクの調査※1では、人手不足を感じている国内企業の割合は5割を超えており、なかでも宿泊業では8割の企業が人手不足の状態となっています。宿泊業において人手不足が深刻化している要因は、コロナ禍で流出した人材が他の産業に流出したまま戻っておらず、加えて旅行需要が急激に回復したことにより供給が追いついていないためです。

    他の産業ではコロナ禍で流出した人材は徐々に戻ってきていますが、宿泊業では6割の企業が流出した人材の数が戻っていないと答えています。尚、人材が戻っていないと答えた割合が5割を超える産業は宿泊業が唯一でした。

    では、他の産業で人材確保に成功した企業はどのような取り組みをしたのでしょうか。
    帝国データバンクの調査結果※2によると、「人手が不足していない」と答えた企業が、その要因について回答した結果、もっとも多かった要因は「賃上げ」であったと回答しています。

    「人手が不足していない」と答えた企業の実際の声です。

    ✓既存社員の賃金アップほか、入社時の初任給を年収で50万円上げたところ、
     応募件数が変わってきた。

    ✓時間外勤務の抑制や有給休暇の取得向上に力を入れ、従業員の定着化に
     取り組んでいる。

    ✓社員への丁寧なフォローによる退職者の抑制を図った。
    ✓働く社員の処遇改善や働く環境をHPなどでアピールすることが重要。

     

    求職者側からすれば、近年の物価高が顕著に表れている社会情勢下で、少しでも給与の良いところで働きたいと考えることは合理的な思考といえます。一方、企業側からすれば人材確保のために賃上げや、働きやすい職場環境づくりの改善には予算が必要です。そうなると先述の利益率の向上が直接的に関わってくる問題です。
    宿泊施設では、実際に利益を上げるためにもっと予約を受けたいが、人手不足で受け入れたくても受け入れられないという問題も多く発生しています。

    このように、現在とこれからの宿泊業の課題「利益率」と「人材確保」はそれぞれ別軸の問題ではなく、繋がりがあり互いに干渉してくる問題といえます。
    利益率向上に関して、観光庁では宿泊施設の利益率向上のための経営ガイドラインを設け、そのガイドラインに沿った経営を実施する施設を国や自治体がバックアップする制度を整えています。
    経営状態を正しく整えたい、これから宿泊業に新規参入を考えている事業者様は、観光庁が実施している『宿泊業の高付加価値化のためのガイドライン』に登録することを推奨します。この登録制度の概要が知りたい方は、どこよりも分かりやすく解説した過去の記事をご覧ください。

     

    ※1 帝国データバンク「企業の正社員・アルバイト」従業員数動向調査2023年7月14日
    ※2 帝国データバンク「企業における人材確保・人手不足の要因に関するアンケート」2023年5月17日

     

     

     

    3.2023年以降の旅行需要と宿泊業に関わる物価動向

     

    これからの宿泊業に関係する事として、①今後の旅行需要の動き(ニーズ)と、利益率に関わる②物価動向についてご紹介します。

    <結論>
    ①これからの旅行ニーズのキーワードは「地域」と「精神的な健康」
    ②次の大きな物価上昇のタイミングは2023年10月!値上げ品目数は過去トップクラスに並ぶ予定


    ①これからの旅行需要の動き(ニーズ)

     

    先述の通り、国内旅行の需要は2019年の9割にまで回復しています。
    コロナ禍が明けてからの旅行ニーズの変化は皆さんも実感されていると思いますが、これからはどのような旅行ニーズがあるのでしょうか。
    JTB総合研究所によると、現在旅行意欲が最も高いのはボリュームが小さいながらも20代。なかでも女性です。そして、60代以上のシニア層の旅行意欲が高まっています。
    これからはシニア層の2名利用だけでなく、3名以上の利用も多く見かけるでしょう。


    ※出典元:JTB総合研究所「2023年(1月~12月)の旅行動向見通し」

     


    そして、これからの旅行ニーズとなるキーワードは「地域」「精神的な健康」です。


    【 地 域 】

    じゃらん宿泊旅行調査2023によると、どの宿泊施設タイプにおいても素泊まりの需要が増しています。また、肌感ではありますが、地域に関する検索キーワードにおいて「地域名+夕食」「地域名+朝食」の検索回数が多くなっている地域をよく見かけます。コロナ禍で「おこもり」という地域から遮断された施設内で過ごす過ごし方から、積極的に地域に出向く傾向がみて取れます。

    ビジネス利用についても、国が新しいビジネス出張のカタチとして、「ブリージャー」を浸透させようとしています。「ブリージャー」とは「ビジネス(Business)」と「レジャー(Leisure)」を合わせた造語で、ビジネス出張の前後の日程を余暇に充て、現地の観光やレジャーを楽しむ旅行形態です。
    この価値観が社会に浸透すれば、これまでの「楽しめない、面倒な出張」から「毎回楽しみに満ちた出張」という、出張の概念をゲームチェンジできる機会が訪れるでしょう。

    ビジネスホテルの取り組みとして、地域資源との結びつきを強め、出張者にブリージャーという新しい旅行形態の啓蒙活動に力を入れてみてはいかがでしょうか。「ビジネス出張」から「地域を楽しむビジネス旅行」に視座を変えると、思考の幅が広がり提供できるサービスやアイディアが増えることでしょう。


    【 精 神 的 な 健 康 】

    以前の記事でもご紹介しました「ウェルネスツーリズム」のように、心身の健康に根差したサービスカテゴリーが増えています。一般的に多くの人にとって「心身のリフレッシュ=旅行」が結びついているので、宿泊業が活躍できるとても良い社会風潮といえます。
    ウェルネスツーリズムの需要については過去のこちらの記事をご覧ください。


    現代は何もかもが便利で完成度の高い製品・サービスが溢れる世の中になったがゆえに、些細な出来事でも大きなストレスに感じてしまう時代です。また、若い層にとっては本来コミュニティが広がるはずのSNSによって「孤立」を感じる人が多くなっているという世情もあります。このような社会の中で「旅行をする意味」「あなたの施設で約束できること」を自社の強みと絡めて、どのように提示できるか考えてみる機会を設けてみてはいかがでしょうか。特にリブランドを考えている事業者様は、新たにこういった視点も必要と考えます。

     

     

     

    4.これからの社会における宿泊業の役割


    これからの社会における宿泊業の役割は大きく2つあると考えます。

    ①ストレス社会における「精神的な健康」をサポートする場所
    ②年齢や心身的特徴関係なく、誰もが旅行を楽しめるユニバーサルツーリズムの実現

     

    ①「精神的な健康」をサポートする場所


    先述の通り、便利な世の中、考えることが多くなった社会がゆえに、些細なことでもストレスを感じ、医師にかかるレベルではないけれど、前向きで元気な状態ではない人が増えています。
    とある企業の商品コピーを私たちの業界に言い換えると、『人には旅行が必要な時が2つあります。ハッピーなときと、そうでないとき』
    旅行はハッピーな時だけではなく「そうでないとき」にも意味のある消費行動です。自己管理力(セルフケア)が大事になってくる社会だからこそ、旅行、宿泊滞在が利用される意味、担う役割はさらに大きくなってくるでしょう。

    特に疲れた精神を休めるために、人込みから離れた場所などの穏やかに過ごせるエリアはこのことをしっかりPRしておく必要があります。「アクセスが不便」「周りに何もない」というデメリットは文脈を変えれば、これからの社会にとって大きなメリットにゲームチェンジできます。

     

    ②ユニバーサルツーリズムの実現


    過去にこちらの記事「2025年問題 宿泊業が社会から求められること」でも取り上げましたが、超高齢化社会を迎えるなかで、年齢による支障や、心身の障害等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行、すべての人が楽しめるよう創られた旅行の実現が社会に求められています。いわゆる、ユニバーサルツーリズムです。このユニバーサルツーリズム実現のために、宿泊施設はその環境を提供する立場として社会的責任があります。

    バリアフリー化と聞くと主にハード面の整備に注力するイメージが強いですが、今後はハード面では対応できないソフト面の整備にも注力する必要があります。ソフト面の一例としては、筆談・手話によるコミュニケーション、点字案内物の用意 、 補助犬ユーザー用にマットやボウルの貸出し、刻み食やとろみ食など調理のアレンジ対応、「クロックポジション」を用いた料理配膳、テレビの字幕表示が可能なリモコンの貸出しなどがあります。

    そして何より重要なのが、これらを整備していることを情報発信することです。なぜなら、ハンディキャップを持つ方や同伴する方は、その宿泊施設を利用できるかどうかを事前に判断するための情報が必要となるからです。
    このため観光庁では、バリアフリー対応や情報発信に積極的に取り組む姿勢のある宿泊施設を含む、観光施設を対象とした「観光施設における心のバリアフリー認定制度」を創設しています。この制度の詳細は観光庁公式ページ「観光施設における心のバリアフリー認定制度」をご確認ください。




    【 余 談 】

    誰もが気兼ねなく参加できる旅行を推奨する一方、度を越した要求やクレーマーと呼ばれる理不尽な言いがかりをする人も存在し、従業員の方の大きなストレスとなっています。コロナ禍でクローズアップされた問題として、宿泊施設は宿泊拒否できない問題がありましたが、これに対し、政府は現行の旅館業法を改正し、迷惑客の宿泊拒否を可能にしました。
    具体的には、以下のような内容が迷惑客に該当する可能性があります。

    • 騒音や暴力などの行為により、他の宿泊客や従業員の迷惑となる行為
    • 無断で喫煙やペットの持ち込みなどの、宿泊施設のルールに違反する行為
    • 無断で延泊や追加料金の支払いを拒むなどの、支払いに応じない行為


    宿泊業者はこれらの行為が繰り返される場合には、迷惑客であると判断し、宿泊を拒むことができることになります。ただ、宿泊拒否を行った場合、宿泊業者は宿泊しようとする者に対して、宿泊拒否の理由を説明する義務があります。

     

     

     

    5.さいごに

     

    ようやく消費が戻り、旅行需要が高まったことで多くの施設様が多忙だと思います。同時に利益幅や人に絡む悩みが大きくなりつつ、目の前の顧客管理やサービスにも力を入れないといけなくなると、どうしても視線が足元に下がり視野が狭くなります。

    現代は社会変動が激しく、またその影響を受けやすい宿泊業界だからこそ、視座を上げ自社や競合以外の『社会』にも注視する必要があります。このような外的要因は自社でコントロールできるものではありませんが、大事なのは自社のビジネスに影響を与える社会的要因をモニタリングして、変化の内容に注意を払うことです。
    『社会』の流れを知り、その変化を味方にできる文脈を見つけることができれば『社会』にとって自社が価値ある存在となるでしょう。そして、そこで生み出された価値は競合との優位性にも寄与します。

    今回は、多忙で大きな視点が抜けてくる今だからこそ、これからの宿泊業を取り巻く社会的要因として旅行需要や物価動向、吉凶の判断基準となる客室稼働率、利益率、原価率をご紹介しました。
    自社の強みを比較的近い“これからの社会”のなかで価値としてどうポジショニングするのか、どう文脈づくりしていくか考える機会になれば幸いです。

     

     

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    この記事を書いた人

    はまだ しゅうさく

    入社後、コンサルティング営業室のコンサルタントとして全国のホテル・旅館の集客支援を行う。現在はマーケティング部署でマーケティング戦略を担当。豊富な実務経験と、データを活用したロジカルな思考で課題発見と解決を得意とする。宿泊業以外の他ビジネスからのヒントを紹介するビジネスコラムを担当することが多い。

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