訪日観光客はどこで情報収集をしているのか?
ホテル・旅館のインバウンド集客の鍵になるPR先とは
2024. 07. 04
最終更新 2024. 07. 18
目次
先月6月19日、JNTO(日本政府観光局)は、2024年5月の訪日客数が3か月連続300万人を超え、5月として過去最高を記録したと発表しました。成長目覚ましいインバウンド市場ですが、今や訪日観光客の国籍は150ヶ国以上に渡り、毎年さまざまな国の方々が訪れています。
こうした状況に、インバウンド集客へ力を入れているという宿泊施設様も多くいらっしゃるかと思います。そんな中で目を向けていただきたいのが、外国人客が日本を訪れる際に重宝している情報源です。実は、国によって海外旅行をするとき・訪日観光をするときに頼りにしている情報収集源は異なります。
本稿では、欧米圏/アジア圏の各国のなかで、訪日人数が多い国の人々は、どの媒体で海外旅行の情報や日本旅行の情報を収集しているのか、JNTOがまとめた調査資料「訪日旅行データハンドブック2023※」を基に紹介します。ご自身の施設が取り込みたい訪日客層への有効なPR先の選定にご活用ください。
北米圏(アメリカ人・カナダ人)の旅行・訪日情報収集先とは
前段として、2023年のアメリカ人とカナダ人の訪日傾向は以下の通りです。
アメリカは、東アジア圏を除くと訪日人数が最も多い国です。旅行形態はおよそ9割が個人手配で訪日し、団体ツアーは1割を切ります。また、約7割のアメリカ人・カナダ人が宿泊先として、洋室中心のホテルを選んでいます。訪日旅行に対し多くの方が期待する内容は、日本食と自然景観、歴史文化です。
海外旅行の際に利用する情報媒体
ここから本題の情報収集について紹介します。アメリカ人とカナダ人が海外旅行前に情報収集をする媒体とその利用率を下記の表にまとめました。
※出典元:日本政府観光局(JNTO)「訪日旅行データハンドブック2023」
このように、海外旅行を計画するアメリカ人やカナダ人が最も利用している情報収集先は「トリップアドバイザー」です。次いで、情報メディアがランクインし、SNS他メディアです。SNSがもっと上位と思われていた方が多いかもしれませんが、想像してみると、もしも自身が海外旅行に行くとして、SNSを中心に行先の観光情報を集めるには情報の量と質においても心もとないと思います。このように、SNSが普及している世の中とはいえ、海外旅行の計画という状況においてはその他の媒体の方が強いことが分かります。
訪日旅行前に役立った旅行情報源
では、実際に日本旅行に訪れたアメリカ人とカナダ人が、訪日前の情報収集段階で役に立ったと回答した情報源は何だったのでしょうか。それは以下の通りです。
※出典元:日本政府観光局(JNTO)「訪日旅行データハンドブック2023」
調査対象となった訪日旅行者のうち、アメリカ人は3人に1人、カナダ人は約2人に1人の割合で、トリップアドバイザーなどのクチコミサイトの情報が役立ったと回答しています。北米圏の訪日客に力を入れたい宿泊施設では、トリップアドバイザーほか、クチコミが掲載されている全世界共通のプラットフォーム「Googleビジネスプロフィール」の見え方にも気を配ることが大切になってきます。
【接客時のワンポイント】
どちらも言いたいことははっきりと主張をする国民性だと言われています。宿泊施設側も曖昧な返答はせず、明確に伝えるように心がけるべきでしょう。また、レディーファーストを重んじる国民性のため、接客の際には特に注意が必要です。
オーストラリア人の旅行・訪日情報収集先とは
訪日するオーストラリア人の男女比は男性6:女性4で、男女ともに20代が多い傾向にあります。
オーストラリアからの訪日客を取り組むメリットは、冬の閑散期対策です。南半球のオーストラリアは長期休暇が12月~1月にあり、この期間が旅行シーズンです。他の英語圏の国は夏季がハイシーズンとなる傾向にあるため、冬季にはオーストラリアからの訪日客に注力すると年間を通じたインバウンド集客が期待できるでしょう。
海外旅行の際に利用する情報媒体
オーストラリア人が海外旅行前に情報収集をする媒体を紹介します。
下記の表の通り、ここでもトリップアドバイザーがトップになっています。
※出典元:日本政府観光局(JNTO)「訪日旅行データハンドブック2023」
SNSの利用も多いため、投稿時のサムネイル画像のテキストには英語表記を入れておくなどの工夫をしておくと、発信内容がより伝わりやすくなります。
訪日旅行前に役立った旅行情報源
オーストラリア人が訪日前に役に立った旅行情報源について、ここでもトリップアドバイザーなどのクチコミサイトが最も多い結果でした。
※出典元:日本政府観光局(JNTO)「訪日旅行データハンドブック2023」
オーストラリア人の訪日前における情報収集源として特筆すべき点は、HP(公式サイト)を活用していることです。宿泊施設のHPを活用している人の割合は、アメリカ人・カナダ人と比較すると約10ポイントも高くなっています。また、SNSよりも航空会社や日本政府観光局のHPを活用している人が多いのも特徴です。このことから、オーストラリア人の多くが正しい情報を得たいと考えている傾向にあると考えられます。宿泊施設のHPにおいては、冬季の地域と施設の魅力発信は抜かりなくしておきましょう。
【接客時のワンポイント】
オーストラリア人観光客の接客時には、アメリカ人・カナダ人の場合と同様にレディーファーストを心がけ、また話中は目をそらさないように心がけるのが良いでしょう。
また、豊かな自然に囲まれが生活を送るオーストラリア人は、アウトドアを好む人も多くいます。観光スポットを案内する際には、自然の魅力を感じられるスポットを交えると喜ばれるかもしれません。特に冬のアクティビティは人気が高いので是非実践してみてください。
イギリス人の旅行・訪日情報収集先とは
ヨーロッパ諸国のなかで2023年の訪日客数が最も多かったのがイギリスです。
そのうち約70%を男性が占めており、訪日観光は男性から圧倒的人気を集めています。訪日イギリス人の年齢層に注目すると、男性は30代~50代、女性は20代~30代の割合がそれぞれ多くなっており、旅行目的はアドベンチャートラベルとラグジュアリーに分かれる傾向にあります。
また、訪日のタイミングは4月を中心とした春季や10月を中心とした秋季で、過ごしやすい気候の時期に増え、滞在日数は10日~20日が多く滞在期間が長いことも特徴です。
他にも、イギリスでは日本の文化やサブカルチャーが人気を集めているため、「日本らしさ」を求めて訪日するイギリス人が多くいます。
海外旅行の際に利用する情報媒体
イギリス人が海外旅行前に情報収集をする媒体とその利用率は下記の通りです。
ここでもトリップアドバイザーが最も多く、約40%となりました。
※出典元:日本政府観光局(JNTO)「訪日旅行データハンドブック2023」
訪日前に役立った旅行情報源
イギリス人が訪日前に役に立った旅行情報源についても紹介します。
やはり、アメリカ人・カナダ人・オーストラリア人と同様にトリップアドバイザーなどのクチコミサイトと回答した割合が大きい結果でした。クチコミサイト以外の情報源は下記の通りです。
※出典元:日本政府観光局(JNTO)「訪日旅行データハンドブック2023」
これまでの3か国と比較すると、SNSが役立ったと回答した人が比較的多い傾向があります。このことから、イギリス人には他の訪日客の旅行シーンを参考にしている人も多いようです。
【接客時のワンポイント】
マナーを重要視する国民であることは念頭におく必要があります。列に並ぶ、扉を開けたら次の人が来るまで開けておく、などがマナーとして存在するほど、他人を思いやる国民性と言われています。おもてなしの心を大切に、接客するようにしましょう。
また、相手を尊重する国民性ゆえに直接的な主張は好まれない傾向にあります。北米圏の訪日客とは異なり、まずは相手の主張を肯定してから自分の主張をすることがイギリス人と接する際のマナーです。
韓国人の旅行・訪日情報収集先とは
訪日韓国人の男女比は半々で、男女ともに20代~30代の若年層が多く訪日しています。成田-ソウルのフライト時間が2時間半、福岡-ソウルが1時間半とアクセスしやすいため、欧州圏・北米圏の訪日客と比較すると滞在日数が短く一人当たりの消費額も少ない傾向にあります。
しかし、2023年に訪日した外国人のなかで最も多いのは韓国人で、訪日者数は約700万人にのぼります。訪日韓国人は、気軽に訪れられる地理的条件が追い風となり、心を掴めばリピーターとなってくれる可能性は十分に高いでしょう。
海外旅行の際に利用する情報媒体
韓国人が海外旅行前に情報収集をする媒体とその利用率です。
※出典元:日本政府観光局(JNTO)「訪日旅行データハンドブック2023」
注目すべきは、訪日韓国人が情報収集に使用している媒体が、これまでの北米圏や欧州圏、オーストラリアとは様変わりする点です。最も利用率が高いNAVERは、韓国の検索エンジンプラットフォームです。韓国におけるNAVERのシェア率は55.54%で、国民の半分以上に使用されているほど人気があります。
他にも、Instagramの利用率の高さも他の国の訪日観光客とは異なる傾向です。Instagram以外にも、FacebookやX(旧Twitter)、Kakao Talk、NAVERブログなど、訪日体験者のリアルな旅行シーンが収集できる媒体を多く利用しています。
訪日前に役立った旅行情報源
韓国人が訪日前に役に立った旅行情報源について紹介します。訪日韓国人が役に立ったと感じた旅行情報源においても、これまでご紹介した国とは異なる傾向が見えます。
※出典元:日本政府観光局(JNTO)「訪日旅行データハンドブック2023」
訪日韓国人が海外旅行の情報収集をする媒体と同様に、トリップアドバイザーのようなクチコミサイトよりも、個人のブログやSNSなどの情報が役立ったと回答した割合が大きくなっています。このことから、知りたい事のピンポイントの体験談を参考にすることよりも、他者の一連の旅行体験を参考にしたい、話題に乗りたいという隠れた欲求があることが伺えます。こういった場合、画面映えのするコンテンツを用意しておくとブログやSNSで取り上げてもらいやすくなります。
【接客時のワンポイント】
韓国人は美容への関心度が高いため、温泉の効能などを説明すると喜ばれるでしょう。また、上下関係や仲間意識を大切にする国民性のため、誕生日や何かの記念を祝う演出サービスは宿泊施設での体験価値を上げるコンテンツになり得ると同時に、SNSでの発信も促されるでしょう。こういった“祝うサービス”があることを韓国語でも分かるようにしておくことは集客施策の一つの手かもしれません。
台湾人の旅行・訪日情報収集先とは
台湾は人口は少ないですが、2023年に訪日した国籍ランキングでは韓国に次ぐ2位と、非常に多くの方が日本を訪れます。このうち55%が女性で、年齢層は20代~30代がボリュームゾーンとなっています。すなわち、台湾人の訪日傾向は同じアジア圏の韓国と似ていると考えて問題ないでしょう。
リピート率も86.4%と高く、日本旅行の人気が伺えます。親日国と言われており、また片道4時間程度のフライトで到着できる訪問のしやすさを考慮すると、今後も訪日台湾人が増える可能性は高いです。
海外旅行の際に利用する情報媒体
台湾人が、海外旅行前に情報収集をする媒体は以下の通りです。
※出典元:日本政府観光局(JNTO)「訪日旅行データハンドブック2023」
訪日台湾人の情報収集においても、訪日韓国人と同様にトリップアドバイザーなどのクチコミサイトよりもSNSの利用率が高い傾向にあります。ただ、韓国とは異なり、バックパッカーズやピークーバン旅遊という台湾独自の旅行情報発信サイトを利用して旅行情報を収集している点です。
訪日前に役立った旅行情報源
訪日台湾人が旅行情報源として利用率を見てみましょう。
※出典元:日本政府観光局(JNTO)「訪日旅行データハンドブック2023」
訪日台湾人も個人のブログやSNSなどの他者の旅行体験から情報収集をしている一方で、旅行会社や日本政府観光局、宿泊施設などのHPにも訪れ情報を役立てていることが分かります。このように台湾人は、他者の旅行シーンを収集するだけでなく、正しい情報を収集している傾向があります。
宿泊施設のHPの多言語では「繁体字」を対応しておきましょう。
【接客時のワンポイント】
台湾人と接するうえで気をつけておきたいことは、台湾を「中国」、台湾人を「中国人」と言わないことです。台湾人は中華文化で生活しているものの、台湾人としてのアイデンティティを持っています。台湾人としてのリスペクトを持って接することが大切です。
余談ですが、台湾では箸を縦に置くしきたりがあります。また、ある程度食事を残して帰る場合がありますが、これは礼儀正しい所作として習慣になってることによるものだそうです。
インバウンド集客の重要点まとめ
ここまで主要訪日国の情報収集源を紹介しました。
大きく分けると、欧米圏の訪日客とアジア圏の訪日客とで、情報の収集先が異なっていることがわかります。欧米圏の訪日客を積極的に取り込みたい場合には、トリップアドバイザー上での見え方が大事になります。また、Googleのビジネスプロフィールでの投稿写真や体験談も同じ「クチコミ媒体」として重要なPR先といえます。
一方、アジア圏の訪日客を積極的に取り込みたい場合は、それぞれの国で影響力が強い媒体を知ることや、個人の旅行シーンに取り上げられPRすることが大事になります。
※今回はアジア圏として、韓国人、台湾人を紹介しましたが、
訪日客として多い香港人は個人ブログ、旅行専門誌、SNSが多く、
タイ人はYouTubeなどの動画サイト、SNS、日本政府観光局のHPなどで
訪日旅行の情報収集がされています。
このようにインバウンド集客として一括りに施策を考えるのではなく、国ごとや“欧米圏”などの広域地域での文化性、習慣性も考察することで、より効果の高い施策が打てることになることでしょう。海外予約サイトにおける施策ももちろん重要ですが、本稿で紹介した情報源を頼りに宿泊施設に目星をつけ、追加の情報収集や最終的な予約手段として海外予約サイトは使われていると考えることができます。つまり、購買行動においては予約サイトよりも早いタイミングで施設との接点になっているのがここで紹介してきた媒体です。下流の要素である「予約サイト」に力を入れるだけでなく、より「上流の媒体」にも注力することが他社と差がつくインバウンド施策になるといえます。
さいごに
先述の通り、国や地域によって情報源は異なります。その一方で、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、実はYouTubeは比較的どの国においても高い割合で利用されています。YouTubeでの情報収集、主に日本旅行に関するチャンネルのコンテンツを活用していると思われますが、それに加え正確な情報を確認したい国民性の人々は、YouTube内でホテルや旅館に関する情報収集をされる方もいると考えられます。
このことを踏まえると、皆さんの宿泊施設が発信するプロモーション動画もトリップアドバイザーやSNSでは十分に伝えきれない「施設・地域滞在の世界観」をより強く印象付けるのに効果的と考えられます。他の人に紹介されるだけでなく、ご自身で【公式発信】としてYouTube上にプロモーション動画を掲載されてはいかがでしょうか。
※今後、YouTubeとトリップアドバイザーの活用方法についての記事を書くのでお楽しみに!
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