「お客様の記憶に残る宿の料理」とは?
成功のカギとなる仕掛けを食の匠が解説!
2010. 06. 01
最終更新 2025. 01. 31
「記憶に残るホテル・旅館の料理」とは一体何なのか?
食ビジネスの業績改善スペシャリストが、宿泊施設の料理で記憶に残す仕掛けを実際の事例を交えてご紹介します。
目次
忘れさせない料理 飽きさせない料理
こんにちは、「食の匠」 大久保一彦です。
今回私がお届けする食のコラムのテーマは「お客さまの記憶に残る料理」。
さて、食事についてお話しする前に、まず自分の宿泊施設がお客さまにとってどういう存在なのか? ということを考えてみましょう。
お客さまにとってどういう存在なのかを知る
お客さまと宿泊施設の関わり方には、2通りあります。
まず、日常生活に密着した便利な宿。もう一方は、旅行客の利用が多い宿です。
前者は、長いお付き合いをするために、夫婦のように長く支えあう関係になるので、“飽きない存在”であることが大切だといえます。
逆に後者は、遠方からのお客さまの多い宿なので、2回目以降の旅行の際に思い出してもらえる“忘れさせない存在”であることが重要。
自分の宿が、この2種類のどちらなのかをきちんと把握することが大切です。
それを前提に、料理も“忘れさせない料理”を目指すのか、“飽きさせない料理”を目指すのかを考えれば、お客さまにどんな食事を提供すればよいのか自ずと見えてきます。
「忘れさせない料理」「飽きさせない料理」
まず、“忘れさせない料理”とは、人に話したくなるようなインパクトを持ったもの。
人に話す行為によって記憶に残るからです。
そのために、味やテーブルまわりなどの点で、忘れさせないような工夫をすることが大切です。
一方、“飽きさせない料理”とは、いわゆる「母の味」。レベルや内容はほどほどで良いのです。
うまい・まずいではなく、飽きずに食べられることが重要となります。要するに味の「安定性」が売りになるのです。
和歌山にある居酒屋「銀平」が、お昼の営業でこの考え方を実践しているので参考にご紹介したいと思います。「銀平」では、コース料理が2種類あります。
初回来店を次回来店に結びつけるための「忘れられない」コースと、訪問頻度が高いお客さまのための「飽きられない」コースを用意しています。
「忘れられない」コースは、宴会シーズンにたまたま訪れたお客さまの1回きりのチャンスを活かすインパクトの強い内容、つまり、一期一会のコースといえるでしょう。
それに対し「飽きられない」コースは、お客さまに過度なインパクトを与えない「やはり、この店だ」と思わせるコース。
2つのコースを使い分けることで、より多くのお客さまに支持されているのです。
お客さまに合わせたメニュー作りで、忘れさせない料理・飽きさせない料理を提供し、お客さまの記憶に残る宿泊施設を目指しましょう。
プロフィール
大久保 一彦 おおくぼ かずひこ
現場に精通して数々の不振店の業態改善を行い繁盛店にした、食ビジネスの業績改善スペシャリスト。「新宿さぼてん」においては、損益分岐点を下げる仕組みを作り、惣菜店の基礎を作った。独立後、日本全国や世界の1万店を視察した経験を生かし、地域密着の店から高級店まで多くの店舗のサポートを開始。東和フードサービス、ハイディ日高、和幸など有名店のブレーンとしても活躍した。大久保一彦の行くところ繁盛店ありと称される。トータル日数2年以上の海外視察経験があり、講演回数も1000回を超える。また、多くの書籍がベストセラーとなり、出版点数は20冊以上。