2022年夏以降の値上げラッシュ!宿泊施設はこの物価上昇にどう向き合う?
2022. 07. 04
最終更新 2024. 06. 14
目次
2022年6月、帝国データバンクが値上げに関する3つのアンケートを実施しました。
・2022 年以降の価格改定計画(値上げ、実施済み含む)を追跡調査(国内の食品主要メーカー105 社に実施)
・企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート(国内企業1,701社に実施)
・企業の価格転嫁の動向アンケート(2022年6月)(中小企業1,635社に実施)
今回は、そこに記載されている物価上昇ラッシュの概要をはじめ、旅館・ホテルが値上げ対応にどう向き合っていくかも交えてお話しします。
▼以下アンケート結果の要約
中小企業1,635社を対象にした『企業の価格転嫁の動向アンケート(2022年6月)』の結果では値上げをおこなった企業でもコスト上昇を価格転嫁できた指数は44.3%となり、これはコストが100円上がっても44円しか価格転嫁できていない状態となっていることから年内に「再値上げ・再々値上げ」の動きも考えられる。
さらにこれまで消費者への影響を極力抑制してきた企業でも全面的な価格改定に踏み切るケースが相次いでいる。
夏以降は「冷凍食品」「酒類・飲料」が値上げの中心に
値上げの食品範囲は拡大、価格は平均 13%アップ
食品部門で7・8 月に追加される値上げ品目数は、合計 3,000 品目を超える。
さらに8 月だけでみると 1,600品目を超え、単月としては今年最多となる見込み。
9月以降も新たに 1,000品目を超え、秋口以降も値上げラッシュはとまらないことが予想される。
夏以降の値上げには原油高に伴う包装資材や容器、物流費の高騰、近時に進んだ円安による輸入コストの上昇を背景に商品価格を引き上げるケースが目立ち、酒類・飲料でそうした傾向が強くみられる。酒類・飲料の値上げ品目のうち8割が7月以降に行われる予定だ。
<価格改定の食品分野別状況>
出典:帝国データバンク
「食品主要105社 価格改定動向調査」
国内の 1,701 社にインターネットで実施した『企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート』では自社の主な商品・サービスについて、2022 年 4 月以降に値上げ済み、または予定する企業は全体の約7割に及ぶ。
前回の4 月に実施した同様の調査と比べて、「2022 年 7~9 月ごろに値上げ予定」の企業は8.6%から19.9%となり10 ポイント超上昇した。「2022年10月~12月ごろに値上げ予定」の割合も上昇しておりしばらくはコストベースの物価上昇が続く見込みだ。
注:母数は、有効回答企業 1,701 社
出典:帝国データバンク「企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート」
以上が帝国データバンクが発表した動向の要約です。
実際に5月までにコスト上昇を価格転嫁できた企業は4割強にとどまったため、残りの6割弱は今後値上げを行うことになります。
値上げがさらに加速・広範囲になることから、宿泊業の多岐にわたるサービス内容を考えると価格転嫁せざる得ない状況になりそうです。
旅館・ホテルはどう向き合う?
宿泊業の事業継続の為にも、必要な価格見通しを実施し、しっかりと粗利益を出していくことが至上命題です。
外食産業となりますが、ぐるなびが6月15日に公表した「外食の値上げに関するアンケート調査」の結果によると値上げは「仕方がない」が55%、「当然」が18%となり、7割以上のユーザーが値上げに一定の理解を示しています。(出典:ぐるなび「外食の値上げに関するアンケート調査」)
値上げについては、ユーザーに理解をしてもらうために値上げの事情を自社HPにしっかりと掲載し
「いくら値上げをしたのか」まで開示している旅館・ホテルもあります。
値上げをするとお客様が離れるのではないか
値上げ自体は、「見せかた」によって、印象が変わります。
例えば、プラン価格をただ値上げするのではなく、同時にお品書きの内容も一新してみたり、こだわりの食材内容を際立たせて提示したりする方法があります。
消極的なイメージを別の項目で積極的なイメージとして伝えることで、ユーザー(特にリピーター)は価格に納得して予約をしてくれます。
その他にも、行動経済学でよく聞く「松竹梅の法則」や「アンカリング効果」などを利用して全体のプラン設定を工夫することで予約単価を上げるテクニックもあります。
また、他社との価格競争に陥らないために、比較の段階で価格以外の「施設の個性」に注目してもらえるよう力を入れていくことが重要です。
「体験できる価値」や「立地の価値」などの独自の価値をしっかりと表現し、価格以外の魅力を感じてもらうことで "他より少し高いけど泊まってみたい" と思わせることが、物価上昇に負けない、なによりの施策ではないでしょうか。