【ホテル・旅館のペット集客事情】今、ペットビジネスが熱い!ホテル・旅館、宿泊施設で求められるペットフレンドリーなサービスとは
2023. 02. 14
最終更新 2024. 06. 24
目次
この記事では、昨今のペット市場の現状やペットツーリズムにおける最新の傾向を再確認し、ペットと泊まれる宿が求められているサービス傾向や集客アイデアをご紹介しています。
新型コロナウイルスの影響で、市場を大きく拡大したものの一つに「ペット業界」が挙げられます。
おうち時間が長くなったこともあり、コロナ前に比べ新しくペットを飼う人が1.3倍も増えたことが最大の要因です。現在、市場規模にして1.7兆円とも言われています。
その影響もあって、最近ではペットフレンドリーをうたい、ペットビジネスに参入する大手ホテルや旅館、グランピング施設が多数見受けられるようになりました。
ニッチだったはずの「ペットと泊まれる宿」は、今や旅の目的となり、競合が増え、差別化やサービスのブラッシュアップが必要になってきています。
今回は、現在のペット市場やペットツーリズムの傾向をもとに、ペットサービスを行うホテル旅館の集客や運営のヒントをご紹介していきます。
今ペット市場がアツい理由
ペット市場の規模が拡大
矢野経済研究所によると、日本のペットビジネスのマーケットは年々規模を拡大し、ペット関連総市場の規模は、2021年度には約1兆7億円に上り、24年度には1兆8億円に増えると予測されています。
コロナ禍でのおうち時間が増えたことによる影響も、更なる追い風になったといえます。
現在、ペット(犬猫)の飼育頭数は全国で1,589万頭。これは国内の人口で言うと2021年時点の30歳~40歳の人口より少し多い数になります。
(出所)
矢野経済研究所「ペットビジネスに関する調査(2022年)
【ペットの頭数2022年】一般社団法人ペットフード協会
【日本の世代別人口2021年10月】総務省
ペットの飼育環境や飼い主の心理変化
また、市場拡大の理由として、室内環境での飼育が増え、長い時間を共に生活することで、飼い主が犬や猫を「わが子」として接するようになった心理的な変化もあると言えます。
昔はそこまで重要とされていなかった、保険や定期健診、フードへの価値観が変わり、家や家具をはじめとした、自分達の購買行動の場面でも、ペットが快適かどうか、ペットと暮らすうえで有益かどうかを基準に逆算しながら選ぶ傾向にあるようです。
出典:https://pedge.jp/reports/outline/ の図を参照して宿研が作成
ペットツーリズムの傾向
次に旅行業界におけるペット市場にはどんな傾向やニーズがあるのでしょうか。
飼い主の傾向や移動手段の変化をお伝えしていきましょう。
ペットを旅行に連れていく飼い主の傾向
ペット旅行専門メディア「休日いぬ部 ペット旅行に関するアンケート調査」によると、ペットを旅行に連れていくと回答する飼い主は70%を占めているといわれています。
出典:ペット旅行専門メディア 休日いぬ部 「ペット旅行に関するアンケート調査」を元に宿研が作成
さらに、宿泊先を選ぶ上で「愛犬と一緒に食事ができるかどうか」を重視する人が47%を占め、重要なサービスポイントとなっているようです。
完全なペット専用の旅館ホテルではなく、一部の客室でペットとの宿泊を可能にしているホテル・旅館は、客室以外のパブリックスペースは同伴できないことが多いので、このような結果になったとも考えられます。
「犬が十分に遊べるスペースがある(ドッグラン設備など)」の回答も約20%あり、飼い主のニーズに応えていくには、大切なペットと一緒に過ごせる場所やシーンが充分にあるかどうかが重要になりそうです。
出典:ペット旅行専門メディア 休日いぬ部 「ペット旅行に関するアンケート調査」を元に宿研が作成
また、手作りペットフード「ココグルメ」の販売などを手掛けるバイオフィリアが、犬の飼い主568人を対象に行った「愛犬との旅行に関する全国調査」によると、観光場所が制限されたり旅費が高くなったとしても愛犬を旅行に連れて行くと答えた割合は、80%を超えており、愛犬1頭にかけられる旅費を尋ねたところ、最も多かったのは「1万円未満」で41.9%、次いで「3万円未満」が37.1%、「5万円未満」が10%という結果になりました。
「大切な家族であるペットには、様々な形で時間とお金をかける」という人が多数派になってきています。
様々な企業のウィズペットサービス
カーフェリー
長距離旅行で利用が多いカーフェリー。以前より「荷物」としてペットを受け入れるフェリーはありましたが、近年は旅客の一員として、ペットと一緒に過ごすことに着目したサービスを導入する動きが見られます。
商船三井フェリーの新サービス『ウィズ ペット』では、専用の区間に設けているゲージにペットを預ける仕組みだったものを一新し、飼い主と一緒に過ごせる客室を設け、小型犬から大型犬、猫やその他小動物と一緒でも利用が可能にしました。
船内にはドッグランや足を洗う場所も設置されており、就航以来80%の客室稼働率で、需要のあるサービスとなっています。
引用:商船三井フェリー ペットと一緒に過ごせる客室
引用:商船三井フェリー 「無料で使える予約不要のドッグラン」
高速道路のSA・PA
全国の高速道路のサービスエリアでもドッグラン併設拠点が増えています。
車で長時間運転をする際、犬はトイレ休憩や水分補給の時間をとる必要があります。
そんなペットとの車移動の需要に合わせ、真夏でも地面が熱くならないような工夫を施した、ワンちゃん用の歩道をつくったり、ドッグメニューが提供されるカフェ等のサービスエリアも登場しており、ますます快適な環境になっています。
人とペットの滞留時間が長くなればなるほど、SAの売り上げが増えるメリットもあるので、この先も様々なSAで導入されることが想像できます。
引用:DOG LABO
航空業界
スターフライヤーは2022年1月26日、国内定期便において日本初となる機内ペット同伴サービス、「FLY WITH PET!」を開始すると発表しました。小型の犬及び猫を対象とし、各便1匹まで持ち込みが可能になりました。
座席は、当該便の最後列の窓側座席にペットケージを設置し、飼い主である旅客は隣の席に座ることができます。
引用:STAR FLIER
ペット受入れ宿の集客アイデア
ここまでの傾向を見ると、ペットとの旅行に積極的な飼い主が多くなり、今までネックとなっていた「移動手段」に関してもペットに寄り添ったサービスが増えてきていることが分かります。
単価もあげやすいペット関連のサービスは、宿泊業界全体でもさらなる市場の拡大が見込まれます。
ペット受け入れ宿として、他と差別化を図るために、他のホテル・旅館はどのようなサービスや工夫を行っているのか、いくつかご紹介していきましょう。
差別化を図るサービス事例
動物専門学校出身のスタッフを採用する
ペット連れのお客様は「ペットへの対応」が満足度を左右する評価ポイントとなります。
動物との接し方や基本的な知識が殆どないスタッフよりも「専門的な知識を習得している人材」を敢えて採用し、サービスの質を上げることで、高い満足度を追求している施設もありました。
一緒の場所で食事が出来る
先述した通り、飼い主が宿泊施設を選ぶ基準として優先度が高いことのひとつに「ペットと一緒に食事が楽しめる」があります。
一緒の場所で食事が出来たり、食事会場への同伴が可能なホテル・旅館さんは、PRポイントとして積極的に発信してみてください。
一緒の寝具で寝られる
基本的に寝具はNGというお宿さんが多い中で、防水シートを敷き、マナーウェア(犬用のおむつ)を付けるという条件でベッドの上も解放している施設様が増えてきています。
旅先で愛犬と一緒に寝れるという体験に価値をつけているケースです。
日中の預かりサービス
宿泊のチェックイン時間よりも前に犬を先に預けることが出来るサービスを行っている施設もあります。
犬と一緒に旅行する際、「行動範囲に制限がかかる」という飼い主の悩みを解消し、犬を連れていけない観光名所や商業施設が旅行の計画にあっても問題なく楽しめることで、非常に満足度が高いようです。
中には、グルーミングルームを館内に設け、預けている間にカットやシャンプー、散歩まで済ませてくれるというサービスを展開する宿泊施設もありました。
「無駄吠えDAY」等のユニークなプラン企画
慣れない環境や犬種の性格状、吠えやすい愛犬を飼っている場合、最初から旅行自体をあきらめてしまう方も多いと思われます。
そんな、ペットとの旅行にネガティブな人たちに向けて、敢えて「吠えてもいい」をうたい、宿泊誘致をするユニークな企画をしている施設もありました。
チェックインの導線やフロアを分ける
口コミでもよく取り上げられるのは「チェックインの導線」です。
ペット連れ専用の入り口や専用の客室フロアがあって、犬を専用のキャリーやクレートに入れずとも移動できる導線を確保している施設もあります。
一般のお客様と接触回数を減らすこの仕組みは、ペット連れのお客様もそうではないお客様もお互いに気疲れすることが減り、満足度も高くなる傾向にあるようです。
~補足~
事業再構築補助金
ここ数年、事業再構築の補助金を使い通常のホテル・旅館から、ペット対応可能な宿泊施設へのリニューアルをされる施設様も多く見られます。実際の事例はこちらの資料ダウンロードに他事業と合わせまとめています。気になるかたはダウンロードしてください。
※令和4年度第2次補正予算が成立し、事業再構築補助金については、令和5年度も引き続き継続することが予定されております。第10回の公募は2023年6月30日までになっています。詳細はこちらをご確認ください。
さいごに
ペット市場の拡大や、飼い主の価値観の変化により、手段のひとつだったはずの「ペットと泊まれる宿」は、今や旅の「目的」となりつつあります。ペットへのおもてなしが満足度に繋がり、「ペットありきの様々なサービス」がさらなる付加価値として今後もますます評価されるようになるでしょう。
宿泊客のグループ属性においても「ペット同伴」がカテゴライズされる日が近いのではないでしょうか。
お客様にしっかり満足いただけるサービスを設計し、実際の利用者から評価を得ることは、選ばれる宿になっていく上でも、過度な価格競争に巻き込まれないためにも、欠かせません。
ペット同伴OKの施設様は、ぜひこの機会に現在のサービス内容や宣伝方法について、見直しされてみてはいかがでしょうか。